その他の疾患について

屈折異常

遠視

屈折異常のうち、眼に入った平行光線が網膜より奥に焦点がきてしまうものです。遠視の原因としては、眼軸の奥行きが短いことによる「軸性遠視」と、角膜・水晶体の屈折力が弱いことによる「屈折性遠視」があります。

見え方としては、遠くが見やすいわけではなく、近くにも遠くにもピントが合わせづらい状態となっています。基本的に病変によるものではないため、メガネやコンタクトレンズによって、視力を矯正することで視力の改善を図ります。

とくに近くを見るときには強いピント調整が必要で、放置しておくとデスクワークなどでは強い眼精疲労が引き起こされ、目の疲れや目の奥の痛みのほか、 肩こり、頭痛、首すじの張り、さらには吐き気や自律神経失調症の症状が出る場合もあります。

一方、お子様の遠視には注意が必要です。赤ちゃんの頃は、みんな眼軸が短く遠視の状態です。成長するにつれて眼軸が伸び、通常、6~7歳くらいで大人と同じ視力を得ると言われています。ただし、左右の視力差があったり、遠視が強かったりする場合は、弱視や斜視の原因となる危険性もあります。1歳半健診や3歳児健診は、弱視や斜視を発見する機会となりますので、必ず受診するようにしましょう。

近視

屈折異常のうち、眼に入った平行光線が網膜上で像を結ばず、その手前に焦点がきてしまうものです。これは眼軸と呼ばれる目の奥行きが、正常な状態よりも長くなっていることによるものです。この場合、近くは比較的はっきり見えるものの、遠くはぼやけて見づらいという状態が引き起こされます。

近視には原因によって単純近視と病的近視があり、屈折検査や細隙灯顕微鏡検査、眼底検査、画像検査などによって診断する必要があります。単純近視は目などの病気によって視機能に障害が現れているものではなく、遺伝的要因や環境要因によるものです。一方、病的近視は、何らかの原因によって、主に眼球の後部に突出したような変形が現れることによって引き起こされます。進行して眼底などに合併症を発症すると失明の危険性もあります。

単純近視に関しては、眼鏡やコンタクトレンズによる視力矯正で改善します。一方の病的近視に関しては、原因となっている疾患を見極め、それに合わせた適切な治療を行っていくことが重要になります。

乱視

ものが二重に見えたり、ブレて見えたりする状態が乱視です。これは、ものを見るときに焦点が1点に集まらないことが原因ですが、人には誰でもある程度の乱視があると言えます。

乱視が強い場合、遠くも近くもぼやけて見えたり、物が滲んだりゆがんだりして見えたりします。また、通常よりまぶしく感じたり、夜景や街灯、信号の光が滲んで見えたり、細かい文字が読みづらかったりします。また眼精疲労を起こして、肩こりや頭痛を引き起こすこともあります。小さいお子様の場合は、弱視の原因となる場合もありますので、注意が必要です。

乱視は「正乱視」と「不正乱視」に分類できます。「正乱視」は、角膜や水晶体が楕円になっていて、緩いカーブと強いカーブの面が生じ、焦点が1点に合わなくなるものです。楕円の傾きによって、水平の線が見にくい「直乱視」、垂直の線が見にくい「倒乱視」、斜めの線は見やすいが、水平、垂直が見づらい「斜乱視」に分けられます。原因としては先天的なもの、加齢によるものなどがあります。

また「不正乱視」は、角膜の表面に不規則な凹凸やゆがみが生じることによって引き起こされます。原因としては外部からの力で角膜が傷ついたり、角膜に炎症を起こしたりすることなどが挙げられます。

軽度の乱視であればとくに矯正の必要はありません。見えづらい場合、「正乱視」に関しては、乱視用の眼鏡やコンタクトレンズを使用します。一方「不正乱視」の場合は、眼鏡やソフトコンタクトレンズによる矯正は難しいため、ハードコンタクトレンズにより、角膜との間の涙の層で矯正するようにします。さらに矯正が難しい場合は、屈折矯正や角膜移植などの手術を検討する場合もあります。

眼精疲労

眼精疲労とは、パソコンでの作業や細かな書類仕事などの視作業(目を使う仕事)、スマートフォンの画面を長期に見続けることなどによって起きます。主な症状は、目の痛みやかすみ、重さ、まぶしさ、乾き、充血、涙が止まらないなどです。さらに、頭痛、肩こり、吐き気、倦怠感など全身の症状が引き起こされ、十分な休息や睡眠をとっても、なかなか回復しない状態のことをいいます。

発症のきっかけは、視作業やスマートフォンの長期使用などのほか、度のあっていない眼鏡やコンタクトレンズを使用していることがあります。また老眼の初期で、無理に近くのものを見ようとしていたりしていることなども挙げられます。ほかにも白内障や緑内障、ドライアイでも眼精疲労が引き起こされる場合がありますので、眼精疲労がなかなか改善されない場合は、お早めにご受診ください。

眼精疲労の治療では、まず原因となっている動作や作業をなるべく改善し、またほかの病気が原因の場合は、その治療を行うことが必要になります。パソコンやスマートフォンを使用する際は、長時間続けて使用せず、休憩を入れ、目を休ませながら使用することが大切です。とくに眼精疲労に対する治療薬はありませんが、ビタミンB12などが配合された点眼薬や内服薬、漢方の内服薬が有効な場合があります。

老眼

老眼は遠視と同様、主に手元が見づらくなるものです。ただ遠視が眼軸の短さや角膜・水晶体の屈折力の弱さが原因であるのに対し、老眼は加齢によって水晶体が硬くなる、水晶体を支える筋力が低下するなどします。これらによって、ピントが合わせられなくなることが原因となります。近視だと老眼になりづらい、ということはありません。遠視と同様、放置しておくと眼精疲労を引き起こし、頭痛や肩こり、吐き気など様々な症状が現れるようになります。

近年では、スマートフォンの長時間使用により、眼のピント調節機能が固まってしまう、「スマホ老眼」と呼ばれるものもあります。これは手元が見づらくなったり、夕方になると物が見にくくなったりするものです。老眼、とついていますが、加齢によるものとは原因が異なり、一時的なものであることが多く、若い世代でもみられます。

老眼は高齢になってからだけではなく、40歳くらいから症状が始まると言われており、仕事や日常生活に影響を及ぼしてしまいます。その場合、老眼鏡や遠近両用の眼鏡、コンタクトレンズにより、眼のピント調節機能を補い、視力の矯正を行います。白内障の方で、手術を検討されている場合は、眼内レンズに多焦点眼内レンズを選択することで、遠近両方にピントが合うようにすることも可能です。

目のアレルギー

人間の身体は、「免疫」という機能によって、ウイルスや細菌など外敵の侵入から守られています。しかし、稀に侵入した外敵に対し、免疫が過剰に反応したり、本来無害なものに反応したりして、様々な症状を引き起こすことがあります。これが、「アレルギー」です。

アレルギーは、花粉、ダニの死骸などのハウスダスト、食品など、様々なものが原因物質(アレルゲン)になり得ます。そしてアレルギーは目に現れるものが少なくありません。目のアレルギーの病気としては、季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)、通年性アレルギー性結膜炎(主にハウスダストが原因)、春季カタル(重症型のアレルギー性結膜炎)などが挙げられます。

このほかにも、コンタクトレンズの装用によって現れるコンタクトレンズアレルギー(巨大乳頭結膜炎)、点眼薬や内服薬等の薬によるアレルギー、化粧品によるアレルギーなどがあります。さらに細菌などに対するアレルギー反応が結膜や角膜に現れる「フリクテン」という病気もみられます。その場合のアレルゲンとして黄色ブドウ球菌が多いとされています。

結膜の病気

結膜炎

結膜とは瞼の裏側から眼球の強膜(白目の部分)を覆っている半透明の薄い膜で、眼球への異物の侵入を防ぐとともに、表面に涙の層を作って潤す役割を持っています。この結膜が様々な原因で炎症を起こすのが結膜炎で、結膜の充血や目ヤニ、腫れ、かゆみ、異物感などの症状が現れます。原因としては、大きく「アレルギー性結膜炎」「細菌性結膜炎」「ウイルス性結膜炎」の3つに分けられます。その多くに黄ばんだ目ヤニや目の充血、むくみ、まぶしさや涙目、場合によっては出血などの症状が出ます。

「細菌性結膜炎」は、細菌の感染により炎症を起こすものです。原因となる細菌としては、黄色ブドウ球菌や肺炎球菌、インフルエンザ菌など身近に存在する一般細菌と呼ばれるものをはじめ、クラミジア、淋菌など性感染症の原因となるものがあります。小児や高齢者、さらにコンタクトレンズを使用している方に発症しやすいのが特徴です。

「ウイルス性結膜炎」はウイルスに感染することで発症するもので、原因となるウイルスとしては、「流行性角結膜炎(はやり目)」や「咽頭結膜炎(プール熱とも呼ばれます)」の原因となるアデノウイルス、「急性出血性結膜炎」を発症する場合があるエンテロウイルスやコクサッキーウイルスなどがあります。ほかにはヘルペスウイルスによる「ヘルペス性結膜炎」があります。これは目の周りに小さな水疱が見られるのが特徴です。

結膜下出血

結膜下出血とは、結膜と呼ばれる白目の部分の下に出血がみられる状態を指します。比較的よくある症状ですが、外見以外の症状はほとんどなく、多くは自然に治ります。結膜の血管が拡張する「充血」と違い、血管が破れて血液が結膜の下に漏れ出てしまっているものです。

外傷や結膜炎などが原因の場合もありますが、その多くは原因を特定できません。この原因を特定できない結膜下出血は「特発性結膜下出血」と呼ばれ、50歳代以降に多く発症するといわれています。その他、糖尿病や白血病、感染症などの病気が背後に隠れていて、それらの一つの症状として結膜下出血が生じることもありますので注意が必要です。

網膜、ぶどう膜の病気

飛蚊症

飛蚊症とは目の硝子体が濁り、その影が網膜に影を落としてしまうことによって、視界に蚊が飛んでいるような影が見える現象を指します。明るい場所において顕著で、瞬きをしても消えず、視界をずらしても影が少し遅れて付いてきます。

硝子体が濁る原因としては、加齢による生理的なものもあれば、網膜裂孔や硝子体出血、ぶどう膜炎などの病気を原因とするもののもあります。また原因によっては放置すれば視力の低下や失明につながる危険性もあるので、早めに一度眼科を受診し、検査を受けることをお勧めします。

ぶどう膜炎

「ぶどう膜」は眼全体を包んでいるもので、虹彩・毛様体・脈絡膜の3つの組織の総称です。これらの組織に炎症が起こるのが「ぶどう膜炎」で、徐々に目の中に炎症が広がり、目の痛みや視力障害が引き起こされます。

ぶどう膜炎を引き起こす原因は様々ですが、日本ではサルコイドーシス、フォークト小柳原田病、ベーチェット病といった眼を中心に症状の出る病気が代表的です。これらはどれも目だけではなく全身に症状が現れる免疫異常の疾患です。このほかには、強膜炎や急性前部ぶどう膜炎、細菌、帯状疱疹などのウイルス、カビ(真菌)、寄生虫などの感染や、糖尿病を原因としても発症することがあります。さらに、原因がはっきりとしないことも少なくありません。

ぶどう膜に炎症が起こると、炎症細胞が眼の中に出てくることで透明な部分が濁り、ゴミや蚊が飛んでいるように見える飛蚊症や、霧がかかったように見える霧視が現れます。また光をまぶしく感じたり、炎症が強い場合は眼が充血したりします。その他、目の痛みや頭痛を伴うことがあります。一般的に感染やアレルギーなどによる結膜炎でも目は充血しますが、ぶどう膜炎が原因の充血は、結膜炎と違い、目ヤニが出ないのが特徴です。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症のひとつとしてとして知られる目の病気です(ほかの二つは糖尿病腎症と糖尿病神経障害)。初期には自覚症状はほとんどありませんが、目がかすむ、視力が低下するなどの症状が出る場合もあり、進行していくと、蚊のようなものが飛んで見えたり(飛蚊症)、墨がかかったように視野の一部分が暗くなったり、視野が狭くなる、などの症状が現れます。さらに悪化すると、失明する危険性もある病気で、日本では緑内障と並び、中途失明原因の上位に位置しています。糖尿病と診断された場合、まずはすぐに眼科を受診されることをお勧めします。

糖尿病とは血液中のブドウ糖濃度が基準値より高く、高血糖状態が慢性的に続いている状態の疾患です。高血糖の状態が続けば、全身の大小の血管にダメージが与えられてしまいます。このダメージは目の網膜の無数に張り巡らされている毛細血管にもおよび、血管を詰まらせ、眼底出血を引き起こします。また、血液から液体が染み出し、網膜にむくみが生じます。黄斑部にむくみが出た場合は黄糖尿病斑浮腫といわれ、硝子体注射などで治療をします。

さらに進行し、血管が閉塞すると、網膜の隅々まで酸素や栄養素が行き渡らなくなります。こうした状態が続くと、新生血管という新しい血管が生えてきて酸素などを補おうとします。しかし新生血管は非常にもろいため、破れて目の中に多量の出血を起こしたり、出血によりできた膜状の組織(増殖膜)が網膜を引っ張って網膜剥離を引き起こしたりします。同疾患は網膜の機能が障害されるため、最終的に、著しい視力低下や失明に至ってしまいます。

まぶたの病気

ものもらい

「ものもらい」は「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」の俗称です。麦粒腫は瞼(まぶた)の縁や内側に細菌が感染して炎症を起こし、赤く腫れるもので、似た症状のものに「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」があり、こちらも「ものもらい」と呼ばれる場合があります。霰粒腫は目を保護する脂質を分泌するマイボーム腺の出口が詰まり、炎症を起こすもので、細菌の感染は伴わないものです。

原因となる細菌の多くは、黄色ブドウ球菌など人間の皮膚や鼻、のどにいる常在菌と呼ばれるもので、目をこすったり、汚れたコンタクトレンズを装用したりすることで、目に侵入してしまいます。これが睫毛の毛根やマイボーム腺などから感染し、炎症を引き起こしてしまいます。睫毛の毛根などに感染したものを外麦粒腫、マイボーム腺に感染したものを内麦粒腫と呼びます。

当初は、まぶたの一部に赤み、腫れが現れ、軽いかゆみや痛みを伴うこともあります。目ヤニが出る、眼にゴロゴロとした違和感を覚えるなどの症状がみられる場合もあります。炎症が進むと赤みや腫れ、痛みが強くなり、化膿が進行します。放置していると腫れた部分が自然に破れ、膿が排出される場合があります。基本的に膿が排出されれば、症状は回復していきます。

まぶたの痙攣

まぶたが痙攣する状態には、自分の意志に反してまぶたがピクピクと動いてしまったり、開けにくくなったりする状態があります。最も多くみられるのが、眼瞼ミオキミアといわれるもので、上まぶたまたは下まぶたがピクピクと動きます。通常、片方のまぶたに起きることが多いとされ、特徴はいつの間にか起こりいつの間にか消えてしまい、長くは続かないことです。原因ははっきり分かっていませんが、健康な人でも眼精疲労、睡眠不足、ストレスなどで起きることもあります。数日から数週間で治まることがほとんどで、自然に改善していきます。

その一方で、注意すべき眼瞼痙攣もあります。たとえば片目に起こる片側顔面痙攣と、両目に起こる眼瞼痙攣です。

片側顔面痙攣(顔面スパスム)は顔面神経が圧迫されることによって起こるといわれており、顔面の右側か左側の半側にのみ現れます。発症当初は眼瞼ミオキミアに似た症状がみられますが、進行するとまぶただけでなく同じ側の頬や口元も痙攣するようになります。

両目に起こる眼瞼痙攣(眼瞼ジストネア)は、まぶしい、目を開けているのがつらい、といった症状から始まり、まぶただけでなく、顔面にも痙攣が広がることがあり、メージュ症候群とも呼ばれています。原因はまぶたや目にあるのではなく、脳から送られるまぶたの開閉の指令がうまく届かずに起こるといわれています。視力が下がることはありませんが、目が開けにくいため、仕事や運転、家事などがしにくい、一人で歩けないなど日常生活に大きく影響する場合があります。

まぶたの下垂

まぶたの下垂は「眼瞼下垂」といい、正面から顔を見た際、瞼(まぶた)が重く垂れ下がって、瞳孔がしっかりと見える状態まで持ち上げられていない状態を指します。片方の目だけの場合もありますし、両目の場合もあります。とくに上方の視野がまぶたに妨げられて見にくくなるものです。

眼瞼下垂になると、無理やり上方を見ようとするため、額の筋肉の力で瞼を持ち上げることで眉毛が上がったままになってしまいます。さらに首を後ろに傾けてものを見ようとすることで、肩こりや頭痛を引き起こす、といった症状などが現れます。

主な眼瞼下垂の種類としては、「腱膜性眼瞼下垂」があります。まぶたは、まぶたの縁にある瞼板を眼瞼挙筋が引き上げることによって持ち上がります。また「腱膜性眼瞼下垂」は、瞼板と眼瞼挙筋をつなぐ挙筋腱膜とミュラー筋という組織が緩んでしまい、うまく力が伝わらないことで持ち上がらなくなるのです。

「腱膜性眼瞼下垂」の原因としては、加齢、ハードコンタクトレンズの長期使用、白内障手術・緑内障手術・硝子体手術などの内眼手術後の影響、先天的な眼瞼挙筋の発達異常などが考えられています。この状態を改善し、視野の障害を取り除くためには手術が必要で、緩んでいる挙筋腱膜を短縮し縫合することにより、眼瞼挙筋の瞼を持ち上げる機能を回復させます。