水晶体から入った光が硝子体で屈折し、網膜に像を結んで、視神経から脳に伝えられる、というのが目で物が見える仕組みです。その中にあって硝子体は、眼球内の大部分の体積を占め、水晶体と網膜の間で眼球を支えるという大切な役割を担っています。

硝子体注射とは、主に抗VEGF薬(抗血管新生薬)を眼球内(硝子体)に注射にて投与する治療法のことです。この治療法の対象となるのは、以下のような病気です。

  • 滲出型加齢黄斑変性
  • 網膜静脈閉塞症
  • 糖尿病網膜症(黄斑浮腫を合併している場合)
  • 強度近視による脈絡膜新生血管

上記のような病気では、網膜の微細な血管が障害されることにより、血液の流れが悪くなることで、網膜に酸素や栄養素が届きにくくなります。すると「脈絡膜新生血管」や「黄斑浮腫」というものが発生してしまうことが多くあります。脈絡膜新生血管は非常に脆く、血液や血漿成分が滲み出し、ものを見るために非常に重要な組織である、網膜の黄斑と呼ばれる部分に障害を与えてしまいます。この「脈絡膜新生血管」や「黄斑浮腫」の増殖や成長を促進するものにVEGF(血管内皮増殖因子)があります。もともと人の体内にあるものですが、この働きを抑制するのが抗VEGF薬で、保険適応となっているものは、マクジェン、ルセンティス、アイリーア、ベオビュ、バビースモの5種類があります。治療ではこうした薬剤を直接、硝子体に注射します。目の治療では点眼薬を中心に、内服薬なども用いられます。ただ眼内の硝子体に直接、注射によって薬剤を投与する治療(硝子体注射)は、点眼薬に比べ、目の奥の障害の改善にも効果的です。さらに内服薬よりも全身に及ぼす影響が少ないため、有効な治療法と言えるでしょう。選択する薬剤の種類や注射の回数(頻度)、間隔は病気によって、また患者様の症状の段階や状態によって異なります。当院では、お一人お一人に対し、期待できる効果や副作用の有無を鑑みて、患者様とご相談しながら使用していきます。

硝子体注射の流れと注意点

注射は外来(日帰り)にて行います。まず点眼薬によって麻酔をし、目の周囲と目の表面を消毒した後、黒目から3~4mm離れた白目の部分に注射して、眼球の中の硝子体に薬物を投与します。少し目を押される感覚はありますが、痛みを訴えられる方はほとんどいません。
注射後は基本的に30分程度眼帯をしていただきますが、当日もお風呂、シャワー、洗髪、洗顔もしていただいて構いません。ただし目を強くこすらないようにしてください。また、アイシャドウやアイライン、マスカラ等、目の周囲のお化粧は翌日から可能です。テレビ鑑賞や読書、パソコンなどによるデスクワークは目が疲れない程度にし、重いものを持つなど目に力の入る作業は避けてください。またプールをはじめ、そのほかの運動も、2~3日は控えた方が良いでしょう。詳しくは医師にご確認ください。合併症としては、非常に稀なケースとして、注射の傷口から細菌が感染して発生する細菌性眼内炎を発症する可能性があります。発症してしまうと重い視力障害を起こす場合があります。注射後は、抗生剤の点眼および、上記のような注意事項を守っていただくことが重要となります。